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ラストライフ・オンライン  作者: 蜜柑
LLにダイブインしたあなたへ
1/99

所以

 最初に言っておこう。

 このデスゲームは一人のゲームプログラマーの妄執から始まった。


 井形尋仁いがたひろひとは所謂「天才」であった。

 ゲームプログラムだけでなく、シナリオもシステムも何をさせても一流。

 ゲームの範囲にとどまらず、彼のデザインセンスは現実でも最高と評価された。

 そんな彼を誰もが憧れ、嫉妬した。

 そして、孤高の人としてもてはやされた。


 だが、そんな彼をALS 筋萎縮性側索硬化症が襲った。

 ALSは全身の筋肉が萎縮し、その力を低下させていく病気であり、最終的には呼吸筋に及び、人工呼吸器を使用しての延命が計られる、現在の医学をもってしても治療が困難な病気である。

 脳の活動に影響はないとされているが、体の表現する力が失われてしまい、今までのような生活が少しずつできなくなり、表現の全てを失うことに井形は恐怖した。

 そして、診断を受けて数ヶ月の間、全ての活動を休業する。


 数ヶ月たった後、彼が最期にと始めた仕事はフルダイブ式VRMMOの製作だった。

 製作当初から公開されたそのゲームの名前はラストライフ・オンライン 通称LL。

 彼はひたすらにゲームの製作を続けた。睡眠や休息をとることは一度としてなかった。

 彼がβテストの期間中にインタビューに対して答えた時に言っていた。

「いらないものは全てが終わってからでいい。これが私の最期なのだから。」

 装備や世界のデザインからストーリーなど全てを一人で設計し試験運用テストさえも一人で行った。

 彼の全てをこめた最期の作品は、今までゲームに触れたこともない人達さえも巻き込み、年齢や性別を問わず、多くの人がその世界に触れたいと願った。

 その結果、βテストの応募者は1万人の募集に対し3000万人を超え、β参加権が非合法に高くで販売されたと言われている。


 彼の財産と彼の才能、その全てを込めたそのゲームの完成度は圧倒的で、βテストにおいてバグが一度も確認されることなく、CMとしての効果しかなかった。


 それから数ヶ月、ついに製品版の販売が行われることとなった。

 多くの購入希望者がいたが、井形はインターネットでの抽選販売とし、初回販売を3万個に限った。


 当選者は幸運だったのだろうか、不幸だったのだろうか。

 それは、彼らそれぞれにきかなければわからない。

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