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天竺到達

 約十年という長い旅路の末、ついに一行は天竺の都に到着した。


「ついに...ついに天竺に」


 三蔵は城門をくぐりながら、感激に震え声で呟いた。目の前に広がるのは、想像を遥かに超える光景だった。


 街には仏教の最先端を示す荘厳な寺院が立ち並び、僧侶たちが経を唱える声が風に乗って聞こえてくる。石造りの美しい仏塔が空に向かってそびえ立ち、街角には精巧な仏像が安置されている。


「すごいですね...」


 三蔵の瞳は輝いていた。まさに仏教の聖地と呼ぶにふさわしい、神聖で荘厳な雰囲気に包まれている。


 一行はまず、目的の一つである経典の受け取りに向かった。大寺院の僧正に謁見し、唐からの使者として正式に経典を授与された。


 僧正から手渡された経典を受け取った三蔵の手は、感激で震えていた。


「ありがとうございます。唐の国で大切に伝えさせていただきます」


 経典の受け取りが無事に完了し、一行は宿に落ち着いた。しかし、三蔵の緊張は高まっていた。


「1ヶ月後に弁論大会が始まります...」


 三蔵は部屋で経典を眺めながら、不安そうにつぶやいた。これまで猪八戒と沙悟浄から学んできたとはいえ、6000人もの高僧を相手にするのは想像を絶する重圧だった。


「本当に僕なんかが参加していいのでしょうか...」


 孫悟空は三蔵の様子を心配していた。


「三蔵、少し街を見て回らないか?」


「でも、勉強を...」


「たまには気分転換も必要だ」


 孫悟空に誘われて、三蔵は街へ出かけることにした。


 夕暮れの天竺の街は、昼間とはまた違った美しさを見せていた。寺院の鐘の音が響き、蓮の池には美しい花が咲いている。


「きれいですね...」


 三蔵の表情が少しずつ和らいでいく。


 二人は蓮池のほとりに座り、静かな時間を過ごした。


「僕は、皆さんに恥をかかせたくないのです」


 三蔵が正直な気持ちを話す。


「八戒先生と悟浄先生の教え子として、安仁の姉として、悟空の妻として...」


「俺はお前が誇らしい」


 孫悟空はきっぱりと言った。


「弁論大会の結果がどうであれ、お前は立派に頑張った。それは変わらない」


「悟空...」


 孫悟空は三蔵の肩を抱き寄せ、軽く口付けた。


 驚きに目を見開いている三蔵に、孫悟空は照れながら笑いかけた。


「こういう時は目を閉じるもんだ」


「は、はい…!」


 三蔵は顔を真っ赤にして、目を固く閉じた。


 月明かりが蓮池を照らしていた。二人の影が、長い間寄り添っていた。


「悟空、僕は頑張ります」


「ああ、俺も応援している」


 翌日から、三蔵は新たな気持ちで弁論大会の準備に取り組んだ。孫悟空との時間が、彼女に必要な安心感と自信を与えていた。


 その日、鬼の里から手紙が届いた。

 猪八戒が皆の前で封を開けた。

 三人が見守る中、猪八戒が読み上げた。


「…安仁アンジンに男児誕生、母子ともに健康。」


 猪八戒の目には、涙が浮かんでいた。


「僕に似た容姿の、角の生えた子供だそうです。里には全ての子供のための相談体制が整いつつあるから、安心するようにと…」


「おめでとうございます、八戒先生、そして安仁…」


 三蔵もまた、涙を流して喜んだ。

 沙悟浄と孫悟空は、口々に祝いの言葉を述べた。


 弁論大会まで、あと数週間。三蔵は、決意を新たに学び続けた。

三蔵は7歳の時に追い出されるように寺を出て、様々な出会いによって大きく成長しながら天竺へたどり着きました。

まもなく三蔵は18歳。小学校1年生から高校3年生までの成長過程をイメージしています。

いよいよ試練と卒業の時が近づきました。弁論大会に向けて、最後の頑張りを見せています。


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