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三蔵 17歳

 三蔵は十七歳となっていた。


 ある日、三蔵に手紙が届いた。


「三蔵様、お手紙です」


 配達人から手紙を受け取った三蔵は、差出人を見て嬉しそうに微笑んだ。


弥龍ミリュウお兄様からです」


 一行は足を止めて、三蔵が手紙を読むのを待った。


「どのような内容ですか?」


 猪八戒が興味深そうに尋ねる。


 三蔵は手紙を読み進めながら、表情を明るくしていく。


「鬼の保護について、法案を出してくださるそうです!」


「本当ですか?」


「はい。以前お送りした手紙の件で、朝廷でも検討が始まったとのことです」


 一同の顔に安堵の表情が浮かんだ。安仁アンジンたちの願いが叶いそうだった。


「それで、天竺の経典を期待しているとも書かれています」


 三蔵は手紙を読み続けたが、次の部分で驚いたような表情を見せた。


「あと...一年後に天竺で高僧6000人が参加する弁論大会があるそうです」


「弁論大会?」


 孫悟空が眉をひそめる。


「はい。そこに、弥龍お兄様が僕を推薦してくださったと…」


 三蔵の声に戸惑いが混じっていた。


「『良い結果を出せば、唐の国で高く評価される。挑戦してみないか』と書かれています」


 猪八戒と沙悟浄は顔を見合わせた。


「それは素晴らしい機会ですね」


 猪八戒が言う。


「天竺の高僧6000人相手に...」


 三蔵の不安そうな表情に、孫悟空は心配そうに眉をひそめた。


「無理することはない」


「…いえ」


 三蔵は決意を込めて言った。


「挑戦してみたいと思います」


「三蔵...」


「僕は、安仁の姉として、先生たちの教え子として、そして悟空の妻となる者として、恥ずかしくない存在になりたいのです」


 三蔵の真剣な表情に、一同は感動した。


「ならば、俺たちが全力でサポートしよう」


 沙悟浄が力強く言った。


「はい。私も天竺の言葉や哲学について、できる限りお教えします」


 猪八戒も頷いた。


「よし、決まりだ」


 孫悟空も賛成した。


「みんなで三蔵を支えよう」


 それから一行は、旅の目的に新たな意味を加えて進むことになった。経典を取りに行くだけでなく、三蔵が弁論大会で力を発揮できるよう準備を整えながら。


「まず、天竺の基本的な言語から始めましょう」


 猪八戒が旅路で三蔵に教え始めた。


「この言葉の意味は...」


「天竺の哲学における『空』という概念について説明しますと...」


 沙悟浄も様々な知識を三蔵に叩き込んだ。


「仏教哲学の根本的な考え方は...」


 三蔵は熱心に学んだ。夜、焚き火の周りで復習し、昼は馬上で暗記に励む。


「三蔵は頑張り屋だな」


 孫悟空が感心して言う。


「はい。きっと素晴らしい結果を出してくれるでしょう」


 猪八戒も嬉しそうだった。


 数週間が過ぎた頃、三蔵の天竺語はめきめきと上達していた。


「発音が随分良くなりましたね。哲学的な議論にも慣れてきたようです」


 しかし、三蔵自身は不安を抱えていた。


「参加者はさまざまな宗派の実力者たちです。僕では太刀打ちできないかもしれません」


「大丈夫だ」 


 孫悟空が確信したように言った。


「お前は十分に成長している」


「そうです。三蔵様の学習能力は驚異的です」


 猪八戒も励ました。


「俺たちがついている。心配するな」


 沙悟浄も力強く言った。


 その夜、三蔵は星空を見上げながら考えていた。


「安仁...僕は頑張るよ」


 遠く離れた里で妊娠中の妹のことを思いながら、三蔵は決意を新たにした。


「天竺での弁論大会...きっと成功させてみせる」


 三蔵の瞳には、強い意志の光が宿っていた。新たな挑戦への準備は、こうして始まったのだった。

旅を通して、三蔵は自己肯定感、自己効力感、自己有用感を上げていきました。自分を信じられるようになると、ものごとに取り組む意欲が湧いてきます。そんな子供を応援することは、教師にとってこの上ない幸せです。

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