陽炎ーカゲロウー
座敷
タタミというやつだろうか?
正座して座る、光るエレナの前に黒い影が2つ。そのシルエットはぼやけててよくわからないが、狐?おすわりした動物のように思えた。
エレナ「あの子は、あの人と一緒になろうとした。あの人を貴方と呼んだ。その呼び方は私のものだ。」
エレナ「あの子は、旦那様と呼んでた。彼は最初から不釣り合いと思ってた。息子の嫁にと思ってた。だから、言い方だけ変えさせた。」
確かに、魔女っぽい。
リュプケ「な?私の言ったとおりさ。」ヒソヒソ
魔女は続ける。小さな声で。
リュプケ「彼女は呪いの魔女だ。」
思い当たる節がいっぱいある。彼女は街の商店街のクジはいつも1等の旅行とかはなかったが、家に足りないものを当てて帰ってきてた。
(カゴ車の)バスはいつもひとつか2つ席が空いてて……
他にもたくさん。とにかく、運が良かった。
リュプケ「お前とひとつになりたくて先に死んだんだ。」
どういうことだろう?
心に空いた穴、心の隙間、ソレを埋める。何で?うめる?はめ込む?
リュプケ「彼女の魂でさ。」
カーラと別れたのは必然だった?
リュプケ「性欲処理と愛は別物だよ。ベッカー。」
キューちゃん「おはようございます。」
リュプケ「マントローブをかぶればなんとか様になるじゃないか?」
そうかな?とりあえず、ついた街の酒場の風景には溶け込んでる。
魔導生物、螺旋の体、伸び縮みする体は隠れて見えない。
ベッカー「そのした、人で当てはめたら裸だろ?」
変質者では?
リュプケ「まぁまぁ。」
フクロウの痕跡はこの街で途絶えている。
リュプケ「おおかた、車か何かで輸送されてきたんだろ?」
なるほど。
ベッカー達はとりあえず、街から近い帝国軍関係の施設を片っ端から当たることにした。
帝国軍基地を遠くの丘に伏せて観察する。基地側からは体を丘の地平線で隠してるから絶対に見えない。
リュプケ「エウレカみたいなロボット野郎を動かそうと思ったら、かなりの電力が必要なんじゃないか?」
彼女は女だが?
ベッカー「となると、ここは違うのかな?」
用意周到なフクロウのことだ、こういう観察ポイントにも注意を払ってるはず。そして、
双眼鏡で見る限り、基地に引き込まれてる電線は細いのが数本しか無い。
リュプケ「その点、私のネクロイドは電力なんていらないし、メンテナンスも容易だ。ケッケッケ。」
何と張り合ってるんだろう?
ハズレの基地を襲撃して、他が警備が厳重になられたり、フクロウ達に逃げられたりしてもまずいし。
キューちゃん「帰りましょう。」
夢
エレナに抱かれて眠る夢。俺が今一番望むモノの夢。
エレナ「体はいい。どうせ骨になる。けれど、心までは渡さない。アナタの心までは他の誰にも渡さない。」
リュプケ「お前は最初から捕らえられていたんだな……」
まだ、外は暗い。
ベッカー「……。今日はアタリを引けるといいな。」
リュプケ「ここもハズレじゃないか?」
双眼鏡で確認できる、基地への電線が少ない。
キューちゃん「ただの車輌保管庫って感じですね?」
裸眼でこの距離の基地?豆粒にしか見えないぞ?
まだ、時間はある。日は高い。
ベッカー「次のところへ行こう。」
街からもうだいぶ離れた。しかし、後戻りしてる暇はない。
コレで最後にしたいが……
夕刻頃には次の基地を望める場所に着いた。
見るからに電線の数が今までのより多い。
リュプケ「ここかなぁ?」
夕日に基地が揺らめく。あの辺だけ熱量が違うのだろう。
見回りの隙を突いてフェンスをキューちゃんがこじ開けて、敷地内に侵入する。
駐車している装甲車の陰に隠れて建物に近づく。
リュプケ「鉄騎兵だ。懐かしいな。」
イノシシ型の装甲兵員輸送車、四足歩行して悪路に強い。反面、防御力に問題がある。今の軽機関銃の弾でも貫通する。
ベッカー「一昔前の装甲車だ。もう戦場では見ないな。」
帝国の電撃作戦に投入されてた。ネクロイドになりたてのとき、コレに単身で立ち向かったのはいい思い出だ。
キューちゃん「見回りにフクロウ?とやらは見ませんね。」
特務部隊の奴らがこんな雑兵仕事やるか、いたらビックリだわ。
フクロウ「そうかな?」
ヴュゥゥン!
ベッカーとキューちゃんの後ろ手に急にフクロウが現れた。
隠れ蓑!?
フクロウ「コソコソ、嗅ぎ回ってるようだなベッカー。お前の調べは済んでるぞ。」
フクロウは腰のリボルバーに手をかけた。
フクロウ「動くなよ。ちょっとでも動いたら撃つ。」
キューちゃんのローブが中で蠢く。
フクロウ「そいつはなんだ?女?」
スパン!
フクロウ「グワッ!俺の足が!?」
右足をくるぶしから切断されたフクロウが倒れる。
ベッカー「フッ!」
スカンっ!
フクロウのガスマスクにナイフを投擲する。
フクロウ「ごボボッ」
毒蛾の粉で絶命する。
リュプケ「うわぁ、こんな死に方、嫌だわー。」
キューちゃんの伸ばした腕を車の陰に隠してフクロウの足を切断したようだ。
ベッカー「やるな、キューちゃん。」
キューちゃん「褒められました。」テレテレ
見つかる前に建物の中に侵入しよう。
もうアタリは暗くなり始めている。監視用の照明が付き始めた。
揺らめくサーチライトに反射する、二人の輪郭は建物へと消えていった。




