5-13
「泣いてもわめいてもダメだ。家主は留守だが今日はここに泊まって、明日帰ろう。いいな?」
「良くない……」
「いいな」
「……」
詰めた残りのティッシュであふれてくる涙を拭うと、リッコの頭を大きな手が撫でた。
それで泣き止もうとして、ぎゅっと固く目を閉じると、目元にたまっていた分の涙がより一層頬を伝っていった。
「ナナカに……会いたかったの……」
「そうだな」
リッコが泣き止むまで、オードはしばらくの間、彼女の頭を撫で続けていた。
* * *
「先に納品を終わらせたのよ。それで、あなたどこに泊まってるの? オード。リッコと連絡取れるんでしょ──え? 入れ違い?」
ナナカは会社が用意してくれたホテルの一室に荷物を置いてから、窓を開けて風の便りの魔法を使ってオードと連絡を取っていた。その声が跳ね上がる。
「今、リッコと一緒に中央北にいるって言うの!? なんで?」
「そっちこそ、どうして予告なしで飛んだんです? リッコの落胆ぶりときたらなかったですよ。師匠に会うのを大層楽しみにしていたようで」
「会いたかったのは私も一緒よ! あなたこそ、リッコを連れてくるならそうと」
「……やめましょう。双方に責がある」
「そうね……」
会話の合間にオレンジジュースを飲んでいるナナカ。魔力は補充されつつあるが、顔の渋面はなかなか晴れない。
その彼女の眉間によっていたしわが消えた。
「ねえ、今そこにリッコもいるのでしょう。風の便りは使えないの? せめて話したいわ」




