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本日は野菜カレーにウインナーをトッピングだ。
以前、金を貯めるのが至上命題だった頃は、トッピングはせずに野菜だけ入ったカレーを食べていた。
リッコは、ああ変わったなぁ。と我ながら思う。
「それ甘口か? 俺の五倍カレーと全然見た目違うのな」
「って、その真っ赤なのカレーなの? なんか別の食べ物だと思ってた!」
「そこ否定するか!? お前相変わらずひでぇなリッコ」
──本当にこいつを口説くことにしていいのか俺? 何だか納得いかない理不尽さが満載だぞ?
ウォーターピッチャーからコップに水を汲んで、この食堂で最高に辛いカレーを攻略するハヤタ。
その間、視線があちこちに泳いでいたのは、やましいことをごまかすためではなかったが、脳内のもやもやを処理するためのものではあった。
もやもやしているハヤタをよそに、リッコは赤熱カレーに興味津々で、まだルーが残っている自分の皿を差し出して、ハヤタのカレーのルーをひとすくい入れてくれるようにお願いした。
おう。と短く答えてハヤタがリッコの皿に自分のルーを混ぜる。
ひとさじ程度では色めは変わらないが、香りと味は少し濃くなったようだ。
リッコは食べ終わるとハヤタが持ってきたピッチャーを五分の四ほど飲み干してから礼を言い、またハヤタは理不尽だと苦悩する羽目になるのだった。




