5-7
「よぉリッコ。お前が言ってたうまい豆腐料理の店、見つけたぜ。今度一緒行かね?」
「うわ素敵。いつ?」
「次の祝日とかは?」
「ごめん無理だわ」
素敵と言って目をハート型にしていたリッコは、日程を聞くと途端にしょぼくれた。
食堂で先に座っていたリッコの右隣に腰かけたハヤタは、彼女の左側を見やって、ぽつりとつぶやく。「今日はオードいないんだな」と。
リッコが言うには彼は今日は上層部と打ち合わせを兼ねた会食に行くことになっているらしい。
するとハヤタはすっきりした顔でリッコに向けて首を傾げた。
「それで何だって。祝日は用事か?」
「その次の日って土曜日でしょ。あたし、大事な用事があって遠出するから、体力を温存しておきたいのよ。準備もあるし」
「ざーんねん。いつなら良い?」
「来週の土日は空いてるわ」
「じゃあ来週の土曜に。A23駅の改札に十一時でどうだ」
スマホのカレンダーアプリを立ち上げて音声入力で予定を入れようとしていたリッコは、マイクをオフにして疑問符を飛ばした。早いのね、と。
ハヤタは何度かうなずいてから返す。飯は注文受けてから炊くらしいので、早めに行ってもちょうど良い時間になるだろうとのこと。
今度はリッコがうなずく番だった。予定を入れて保存すると、スマホをポーチに収めてスプーンを持ち直す。




