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笑いながらナナカはリッコに聞かれたことに答えてくれた。
火の精霊を呼ぶと燃料は必要なく魔法の火を燃やせること。大抵の植物は魔法の火で炒ると黒くなること。火の精霊を自分も呼んでみたいと言い出したリッコに対して、ナナカは難しそうに眉根を寄せた。
「あら……そうね、どうかしら。子どものうちは属性が固まっていないから、呼べば返事をするかもしれないわね」
「呼びたい呼びたい。ねえナナカ、いいでしょ?」
「ええ。試してみましょうか。でもリッコ。一言二言試してみて、もしダメならすっぱりあきらめるのよ。いい?」
「うん! 分かった」
ナナカは再び立ち上がると今度は燭台付きのロウソクを一本、持ってきてテーブル中央に置いた。水晶でできた二十センチくらいの杖を手にしてロウソクに火を灯す間、彼女はずっと異国の言葉を喋っていた。
「ねえ。今なんて言っていたの?」
「今の? あれはリッコの国の言葉で言うとね、『灯れ火よ、四十九の階段を上り下りて。我が生くる世の門となり汝らの世界から同胞を寄せよ』ってなるわ」
「……うーん、難しい……」
「大丈夫よ、リッコがこれから使う言葉はもっと簡単だから」
言ってナナカは両手を差し出し、リッコの手を左から順にロウソクの側へ手のひらを上に向けてかざすように誘導した。そして自身の手はリッコの手を下から支えるように添えて、目を閉じるように言う。その後、これから言う言葉を繰り返すように告げるのだった。