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「ねえ、そう言えばオードの杖は結局、いくらで買ったの?」
「いくらでって……」
「弟子なら安くなったりした?」
「おいおい何言ってんだ。杖に値段なんて付けられないよ」
「だって持ってるじゃない」
「これはもらったの! 修行の修了祝いに、ただで!」
「──え!?」
リッコは目を丸くして固まった。
またどういうリアクションだと思って彼女の目の前で手を振ったオード。
その手を払いのけてリッコが彼をにらみ上げた。
「でも、確かにナナカは金貨を積んだ紳士な感じの男の人に杖を売ってたわ! あたしこの目でちゃんと見たんだから!」
「なるほど──あれを見てたのか……」
「ほら! 身に覚えがあるんじゃない!」
苦い顔をするオードを、びしっと指差すリッコ。
彼は首を左右に振ってから真っ直ぐに彼女を見つめて言った。
「その後のことは見てないか? 師匠はあの男が去った後、玄関に塩をまいていた。やっかい払いのまじないだ」
「? そう言えば、何か……まいてたわね。やっかい払い? もう二度と来ないように?」
かたくなだった彼女の目元が自信を失い揺れた。彼を指していた指を引っ込めて、緩く手を握る。迷うように瞳が右往左往を繰り返す。
それを見守りながらオードが続けた。
「確かにおれたちの国で魔法は信じられている。だが、魔法使いは職業としては三流以下だ──」
オードが語ったのは、中央北での彼ら魔法使いの扱いについて。




