5-2
あんな風にそつなくできたら最高なのに。道のりは遠く険しい。
オードは、くす。と小さく笑ってリッコに答えた。
「魔法使いは歌でできるんだ。おれに弟子入りする?」
「長い呪文で良いです!」
「まだ師匠のこと気にしてるのか? 別にあっちはそんなこと気にしないだろうに」
そう告げてすぐオードは死ぬほど後悔した。
困り果てた表情をしたリッコの瞳が涙で潤んだからだ。
「いや! 仲直りできると良いな! いやきっとできる! うん!」
「……できる?」
「ああ! 確かさ!」
「……うん。なら良い」
リッコは閉じた目元を握った手の甲でぐしぐしと拭ってから顔を上げて、ふにゃっと情けなく笑った。
それを見てオードは安堵の吐息を漏らしたが、内心では頭を抱えた。
まったく、この二人のケンカはフォローが大変だ。お互い仲直りしたいと思っているのに、なぜこんなに長引いているのだろう?
結局、対話が足りてないのだろうに。
会って直接、話し合えば二人の間に立ち込めているもやなど瞬く間に晴れるというものだ。
「なあ、次の土日で、連れて行ってやろうか? 中央北へ」
「今週で終わりなの? ここでの仕事」
「いや、来月末までこっちだ」
「それならまだ……ナナカのおかんむりの理由が分かるまでは、行かれないわ」
「師匠の? なんだって?」
「怒ってる理由よ。自分で気付けって、オードが言ったんじゃない」
それはナナカがオードの姿で言ったことだ。
気に入らなかったことがあるなら、はっきり本人に直接言えばいいのに、とオードは思う。




