5-1
物に精霊を入れる方法を身につけたリッコは、杖にも一応、それができるようになった。
一応だ。
今現在の困りごとは、入っているのかどうかリッコには判断がつかないところだった。ガラス玉は光るから良いのだが、杖はそれがない。毎回分かる人──オードに見てもらっている。
「まずは光を入れてみてくれ。明かり取りの魔法は初歩の初歩だからな」
「どう?」
「うーん。また水が入った。リッコは水が好きだな」
「好きでやってんじゃないわよ〜」
「水ばかり三つも入れて……なあ」
一個で良いのに。と続けるオード。
精霊などと初心者は本来ならひとつ操るだけで精一杯だ。そこを持ってくるとやはりリッコは初心者ではないのだと、感心してしまう教育係だった。
一個のほうが良い? とリッコがオードに聞いた。
オードは深くうなずいた。
水が一個であれば、まだそこから冷気だけ抜いて光に変えるのもたやすいからだ。しかし三つも並んでいると、お互いの結束が強くなってしまい、属性を変えさせるのは難しい。
「ねえ。もう初歩は忘れちゃわない? いきなりかもしれないけど、水の魔法を教えてよ」
「そうだな。それが良いかもしれない。それじゃ雨でも降らすか。中庭にいるしちょうどよい」
「ああ、キックオフの時にしてたの?」
「そうそう。呪文長いぞ」
「え~、あの時は歌を歌ってなかった?」
杖をふりふり動かしながらスローテンポの歌を歌って鉄板サイズの雨を降らせたオードのことをリッコは忘れていない。




