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オードは一度は食べてみようと思っていた茶漬けをとうとう注文して、さらさらとかきこんでいるところだ。
洗い髪を完全に乾かすのが面倒で、水が滴らない程度まででドライヤーをあてるのをやめて湿った髪をそのままに夕飯を食べている。
昼間はミートソースにチーズ増しましのピザを食べたから、夜はあっさりしたものを選んだのだ。
昼食の時のことを思い出すと、思わず笑ってしまう。
分かりやすい男だ。からかい甲斐があって面白い。
ナナカあたりに知られたらどうして協力してあげないのかと叱られてしまいそうだ。
それもまた楽しくて、オードはさっきからひとり笑っている。
──まあ、話の腰を折ったのは、リッコが困っていた質問のみ。あえて悪者になったのだが。
「休みの日には魔法の練習、貯めた金で杖を買いに行き、夜明け前に起きて精霊召喚の練習をしてます。とか。なかなかに言いづらいな、魔法が夢物語の扱いをされてるこの国では」
こりぽりと噛み砕いた漬物を飲みくだして、ふとオードは視線を斜めに上げる。
「いや、あれが世に出れば、この国での魔法の扱いも変わるのか」
どうなるものかな。
好意的に受け取られるか。それとも。反対派はオードの国にもいる。ただ、あちらでは魔法は『みんなに』なんて開かれたものじゃない。それがどう働くか。まだオードにも見えない。
「受け入れられるといいな? どうせなら」
きれいに平らげた食器を下げてもらうため、オードはフロントを呼び出した。




