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ぽんぽんとオードに背中を叩かれて、がっくりとうなだれるハヤタ。
それには気付かず、カートにあれこれと素材を入れていくリッコ。
床に引いてある金属光沢のある紺色のラインをカートで通り過ぎると支払いは完了。来月に口座から引き落とされる。
「じゃあ素材費のお礼に昼飯おごらせてくれよ。まだ時間あるか?」
「うん。オードと食べるつもりだったの。いいでしょオード」
「オードもか?」
「いやあ、おれもおごってくれるのか。何だか悪いな」
言ってねえ。
そう返したかったハヤタだが、オードの同伴を断ることによってリッコまで来なくなったら困るなと考え、拳ひとつ作ってこらえた。
オードは楽しげににやにやしている。
リッコは「ハヤタ太っ腹〜」などと言ってうれしそうに悪びれない笑顔を向けた。
もうそれだけでいいや、とハヤタは志の低い満足感に包まれて苦笑いした。
* * *
リビングのソファを背もたれに、床に座ってローテーブルの上に広げた大小様々なガラス玉をテグスで繋いでいくリッコは、楽しげに歌を歌っていた。
今日、注文した料理が届くまでの間にオードから教わった水の護りの歌だ。
「♪『ほーのーかに〜ただよーう、かおーりーは〜おがわーの』♪」
大中小のガラス玉を縦に繋いだペンダントトップにハヤタのリクエストで黒い革紐を組み合わせた水の護符。
それを握り込むと、最初のうちは玉に自分の手指の熱が伝わって温まっていたが、歌を三回繰り返して歌い終わる頃には玉からわずかに冷えを感じた。
水精が宿ったのかと確かめるため、部屋の照明を落とす。
すると、すべての玉が同じ強さで『ぽぅ』と発光していた。
濃い青の光だ。




