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「どっちもそれぞれの良さがあるんだな。気泡があるのは水だけでなく風も入れられる。すると火属性の人間にも肌馴染みが良くなるんだ」
へー。と二人で感心したような吐息をもらして、ハヤタが掲げた玉を四つの瞳がのぞき込む。
もう一つのほうの良さはと聞くと、オードはそれを持ってみるようにとリッコを促した。
リッコはオードの指示に従い、左手でガラス玉を握り、右手でハヤタと握手をした。
その形でオードはリッコの左手を拳の上から包み込み、リッコに呪文を復唱するように言う。
「宿れ水よ──その遥かな深みより」
すると、海の波。潮の歌が彼女たちの耳の奥で聞こえてきた。
その音に集中しようと目を閉じると、眼裏に海の中の景色があふれて自分たちがどんどん沈んでいった。
うわ!? と、上がる声はハヤタのもの。彼はリッコと握っていた手を離すと、目を真ん丸に見開いて激しく脈打つ心臓の上に手をやった。
「何だ今の?」
「深水の良さだよ。ただの水ではなく海とつながるから、護符の力が強まるんだ」
「もっと底まで見てみたかったのに。ハヤタって海は嫌い?」
「いや、俺な……その、カナヅチなもんで」
「ええ、そうなんだ〜。そしたら、気泡入りのほうが良いわよね」




