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下唇を突き出してあごにしわを寄せ、眉間に厳しい縦じわを作ってコップを持つ手に力を込める。
──オードのやつ、何やってやがる。
リッコもリッコだ。なんでされるがままなんだよ。
「くっそぅ」
ハヤタがつぶやいた途端、コップの中の水が、ぼこぼこっ! と沸騰した。
一番驚いたのはハヤタだ。
ただただびっくりして、コップから離した手でどきどきしている心臓の辺りを押さえる。
「魔法、──か?」
そーっとコップに触れると、持ち上げられないほど熱くなっている。
上部の水(湯?)がないところを持って口元に近付けると、確かに湯だった。
ふーふーと吹いて冷まして、一口すする。
茶やコーヒーでも淹れたい温度だ。
給水機からもうひとつコップを持ってきて、水を入れて握り込んだ。
沸け沸けと念じるが、水のままだ。
リッコの頭から手を下ろしたオードは、火魔法の気配を感じてそちらのほうを向いた。
その視線を追いかけて、魔法の気配は察知しなかったリッコもハヤタがいるのには気付いた。
そして、二人でそちらへ向けて歩き出した。
手には後は片付けるだけの状態になったトレイが乗っている。
「はぁいハヤタ。今日のお昼はカレー?」
「おうリッコ。いつもオードと一緒なのか?」




