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「器?」
「そう。だから精霊の扱いを覚えてコントロールできるようにならないと、杖だけあっても仕方ないわけ」
オード(ナナカ)が自分の杖をリッコに渡した。
杖を二本と手引き書を一冊持っているリッコはそれらを両腕で抱き抱えるようにして話の続きを促す。
オード(ナナカ)が言うには、精霊を扱う方法が手引き書に書いてあるのだとか。
そしてリッコが抱いている手引き書を指さした。
だから、杖と書と両方が揃えば確かに魔法は使えるとも。
そして、ただし、と釘を刺す。
「魔力を開通すればの話よ。リッコはもう開通しているし、練習を続けていたことでその時に開いた路がふさがらずに開いたままになっているはずなの」
「精霊召喚に成功したことはないし、それ以外の試みはしたことないわ。それでも路は閉じてない?」
「ええ。属性を確認するために握手した時に、あなたの魔力が流れ込んできたってオー──おれは感じたよ」
話を戻しても良いかなと前置きして魔法使いは淡く笑った。
「だからね、自分の身体を杖に見立てて、精霊を一旦宿らせてから解き放てばいいんだ。リッコ、今は循環の呪文も練習してるでしょう? もし良ければ、杖を使わない魔法の使い方を教えようか? 『おれに弟子入りすることになるけど』」
リッコと一緒になって目を真ん丸く見開いたのはオードに化けているナナカだった。
片手で口元を覆って首を左右に振る。
空いてる方の手で否定の形にジェスチャーしたりもするが、幸か不幸かリッコは見てなかった。




