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「リッコはわた──おれたちと会ってない間も魔法を使う練習してたって話でしょ。ならそろそろ杖がなくても魔法が使えておかしくないと思う。開通は済ん」
「どういうこと!?」
まだオード(ナナカ)が言い終わらないうちから食い気味に答えて、ずいっと詰め寄るリッコ。
オード(ナナカ)は仰け反りながら降参の形に両手を挙げた。
リッコはなおも言い募る。
「杖か指輪か本がなきゃ魔法は使えないんじゃないの?」
「あら、これまた代表的なとこ挙げて……」
「ねえどういうこと? あたし杖がどうしても必要だと思ってたのよ」
「覚えてない? 杖だけあっても魔法は使えないって教えたことあったでしょ。……ナナカが」
「覚えてるわよ。でもオード、杖とマニュアルがあれば魔法は使えるんじゃないかって言ったわ」
「あら、そんなこと言った。そうね」
オード(ナナカ)は少し遠い目をして空を見上げた。
今、二人は中庭にいる。
始業の鐘を聞いてすぐリッコのところへやってきたオード(ナナカ)は、連れ立って中庭へ向かいながら、他の開発者やテスターには言わない話をリッコにだけしている。
リッコはじっとオード(ナナカ)の次の言葉を待った。
「杖や指輪はね、極東語では依代って言ったら良いかしら。精霊の力を発動させるために一時、彼らを宿らせる器なの」




