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ジェスタは先客と話し中だった。
相手は後ろ姿しか見えないが、赤銅色の短髪。ハヤタだ。
「……使えてたさ。後は使えなかった奴と、試さなかった奴だ」
「試さなかった奴? いたのか」
「まあな。なんか知らんが端から失敗すると決めつけててよ、やりたがらなかったんだ」
「なあに。キックオフでの話?」
リッコはハヤタの後ろから顔をのぞかせて、するんと話に混ざる。おぅ。と短く声をもらしたハヤタは体の向きを傾けて女性二人を含めた形に円を描くように立った。
「ちなみにお前ら使えたか? 魔法。試作品はもう手に入ったろ? 試したか?」
「ハヤタ、今その話題は……!」
「ぅ……」
リッコは薄っすらとふさがりかけていた心の傷が開いてその場にしゃがみ込んだ。両膝を抱えてどんよりとうつむき、ぶつぶつ呟き出す。
「いや、なんだお前、魔法に詳しいくせにまだ使えてないのか」
小さく丸まってしまったリッコを見て、少し考えたハヤタは、すぐそばに立ったままで見下ろしながらそう言った。彼は更に続ける。
「オードも才能はあるって言ってたのに、宝の持ち腐れってあるんだな」
そこまで言われると目くじら立てたリッコが勢いよく立ち上がった。
じろり。ぎろり。下からにらみ上げる瞳にあった潤みは瞬く間に引いていき、その代わり怒りに満ちたきらめきが宿る。ずびしっ。と、人差し指を突き出してハヤタの額をつついた。
「せいぜい言ってなさいよハヤタっ。そのうちその宝に開眼したあたしが、美しく使いこなしてみせるから!」
「あー、へいへい。楽しみにしてるぜ」




