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3-21

「……そうね。素人だもんね」


 リッコは物静かに下唇を噛んだ。わずかばかりの悔しさが前歯に込められる。

 玄人はだしとはいかないまでも、そんじょそこらのど素人よりは魔法について明るいと自負している。けれどもそれを知られるわけにはいかない。

 別に悪いことはしていないハヤタを睨みつけてしまいそうで、リッコはゆっくりと両目をつむった。

 悔しい。くやしい。くやしい。


「どした?」


 ふに。と、ほっぺをつつかれて、毒気が抜けたリッコは目を真ん丸に見開いた。

 動揺に潤む目。気恥ずかしさに真っ赤になる頬。答えに困って口が数回開閉した。


「な、な、な──何でもないっ、もん」

「そっかあ。なら良いんだけどな」


 指を引っ込めたハヤタは、にやにやと含みのある表情で笑った。

 決して嫌だったわけではないが、なんとなく居心地が悪くて、リッコは立ち上がる。行くのか? と聞かれて頷いたリッコはまだ少し赤い顔を右手で扇ぎながら通路を見た。次いでハヤタを見下ろして手を振る。


「それじゃね。最後の仕上げ頑張って」

「おう。サンキュ」


 手をふりふり立ち去るリッコは、ハヤタから見えなくなる位置まで来ると、先ほどつつかれた頬に手を当てた。ほぅ。と、熱のこもった吐息をひとつ。その後、両手を胸の高さまで持ち上げてこぶしに握ると顔を左右に振った。

 そうして進む先は資料室だ──杖が無いなら無いなりに、できることはある。

 次の角を曲がる頃には、リッコの頬からは赤みが消えていた。


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― 新着の感想 ―
オードが杖をもつのを、うらやましく思っていたリッコ。「素人には限界」と言われた言葉も、気になり悔しくなる気持ちが目や頬に表れていて、印象的です。 でも、それをバネに自分なりにやるべきことを考えている…
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