1-5
「ね、良ければ寄っていってちょうだい。ちょうど今朝クッキーを焼いたのよ。それに、とっておきのお茶を淹れるわ」
「うん、ありがとうお姉さん!」
「ナナカよ。お嬢ちゃんは?」
「あたしリッコ!」
招かれた屋内はほんのりと涼しく、色々なハーブの香りが混ざり合って最終的にちょっとだけ甘めの爽やかな匂いが漂っていた。彼女が身にまとっていた香りの正体はこれかと納得する。
入ってすぐの部屋は中央に円テーブルが置かれていて、それを囲うように輪っかのベンチが据え付けられていた。その上に乗っているクッションが室内の良い香りの元なのだろうか。これもいい匂いだ。正方形の窓と正三角形の窓と円形の窓がどれも揃いのレースのカーテンで飾られている。
リッコは勧められるままベンチに腰かけて興味深げに周囲を見渡した。
古びた大きな棚には所狭しと瓶が並べられていて、中には砂糖らしき白い粒や乾燥させた葉っぱ、それにピンクや黄色、紫などの色鮮やかな花びらが入っている瓶もある。
「色んな瓶があるね、えっと……ナナカ?」
「ああ、下から三段目より上のは触っちゃダメよ。中には危ないものもあるから。そうね……これなんかは大丈夫。魔法の砂糖よ?」
ナナカはそう言って棚の二段目から取り上げた瓶をリッコの目の前に置く。中は砂糖のようだが、時々レモンの輪切りが見えた。
「魔法?」