3-18
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リッコは氷を入れたグラスを枕元に置いて明日の準備を整えた。
自分の属性が水だと分かった以上、それ以外の属性を試す必要はない。毎日、水の精霊の召喚を試みて、成功事例を増やすつもりだった。
水属性は液体のほか循環するものも全般的に司っている。リッコは眠る前の時間をもうひとつの試みの時間に当てることにした。
オードに帰り道の途中で聞いていた方法だ。
ベッドの上で仰向けに寝転んで、両サイドに寝かせた手のひらをマットに触れさせる。足の両親指をぴたりとくっ付けて、リッコは目を閉じた。深く深く息を吸う。吐き出して、また吸って。唱える。
「我が血、我が命──めぐれ我が体内。すべての温もりと共に」
すると、普段は冷えている手指や爪先が温かくなってきた。リッコは成功したのかと思い慌ててベッドから降り、部屋の照明をつけて隅にある鏡を覗き込んだ。瞳の色は──焦げ茶一色だ。
「来てなかった……」
はふ。とため息をついて照明を落とし、ベッドに入り直す。また爪先が冷えてしまったが、精霊召喚は短時間に何度も試すのは禁止されているから今夜はあきらめた。ヒーターをつけてほかほかのベッドの中で今日の一日を終えた。
* * *
フォン
キックオフミーティングから一週間以上が経過した火曜日。
出勤時に聞くその音はこれまでのものと違っていて、リッコはまだ慣れない。
だからこそワクワクして、ついつい頬と口角が上がってしまう。




