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『可愛くてって……ペットじゃないんだから……このことは秘密にしておきます』
とても懐かしくて、ただただ呆れるやり取り。
それを思い出していたオードはシャワーを浴びてようやく疲れが抜けたような気がした。もう寝てしまおうかとも思ったが、ナナカと同じく三食きっちり派だ。ルームサービスのメニューを見て豚肉のステーキのオレンジソースがけを頼むと、注文が来るまでの間、部屋の照明をぎりぎりまで落とした。そしてソファに腰かけて深く息を吐き出す。
「さて。ケイオンを子どものおもちゃにしないためには、育ち切った大人にもある程度の魔力を扱える仕組みが必要になってくるが……」
明日、どうするつもりなのかこのプロジェクトの責任者に聞いてみよう。まあ初歩の初歩とはいえ、一応魔法が使えた者も数名出ている。心配は無用だろう。
魔法協会へ助っ人を求めてやってきたこの会社お抱えの交渉人から、量産型の杖のコンセプトは、『みんなに魔法を』だと聞かされた。本日のキックオフミーティングでも紹介されていたフレーズだ。それを聞いたから協力することに決めた。
魔法は秘匿するべきものではない。もっと開けていても良いのではないか。皆で共有したほうが、悪用の抑止になるのではないのか。
そこまで考えて部屋のドアがノックされた。
明かりを元の明るさに戻しながら部屋を横切りドアを開ける。礼を言って室内のローテーブルに食事をセットしてもらうと、空腹を訴える胃にワインと共に豚肉を流し入れて、満たされる時間を過ごしていった。




