3-12
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ハヤタは簡単に使えた魔法などよりも、別のことが気になっていた。
リッコのことだ。
今日の帰り際に彼女を見かけた。途中まで一緒に帰ろうと声をかけようとしたところで、オードに先を越されたのだ。
あの二人は、どうやら以前から知り合いだったらしい。が、付き合っているような気配はない。それはもしもこの芽生えかけの恋心が本物に変わっても、まだ彼女をあきらめなくていいということを意味する。
「でもあいつ、どこで異国の魔法使いなんかと知り合ったんだ……」
湯上がりで秋物のパジャマを着込み、ビール片手にリビングのソファに腰かけたハヤタは自分にとって最大の謎について考えを巡らす。が、まだリッコと出会ってから何日も経っていない。情報が圧倒的に不足していて、いくら考えても答えは出そうになかった。
「邪魔になったらどうすっかなー……はあ」
男としてはそうそう負けていない。とは思うが、あの魔法好きなリッコのことだ。相手が魔法使いだというだけでこちらの形勢不利は火を見るより明らかだ。
まったく自分はどうしてあんな女のことを気に入ってしまったのか。情けないことに一目惚れだ。丸っこい面差しに黒目勝ちな目。ぽってりした下唇が全体的に愛らしい面持ちの中でそこだけセクシーだ。腰は肉付きが良い割に胸が乏しいのも好印象で……。
「って、いかんいかん。外見より中身だろ、俺!」




