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今度こそいけそうな気がしていたリッコは頬をふくらませて不満を口にする。
「なんで止めるのよオード」
「呼んだらすぐに行き先を与えてやらないと駄目だ。でないと精霊が暴走する」
「あたし、呼べてたの? 行き先って杖なんでしょ。なんで入っていかないのよ」
「分からない。が、杖を初めて使う割に精霊を三体も呼べるのはさすがだな。けれど今回はもう諦めるべきだ」
「もう……あきらめてばかり」
「これから業務の中でな。初歩から少しずつ覚えていけば良いさ」
「おい、次が詰まってるぜ。リッコはもう良いんだろ?」
「良くないけど……はい」
しぶしぶ杖をハヤタに渡したリッコは、ちょっとは勉強になるかと思って彼の生まれて初めての魔法を見守った。
ハヤタはオードの指示に淡々と従う。今は握手によって火属性であると判定されたところだ。オードの説明に頷いて杖を頭上にかざすと、熱でも出ているのかというほど顔を赤くした。
それからハヤタはオードの歌に合わせて杖を足元の鉄板の上へ向けてかざす。すると、オードがしたように淡いオレンジ色の火が十秒ほど燃えてそれから跡形もなく消え失せた。
「これぞよし!」
「ええ〜なんで〜〜」
「嫌そうに言うなよ……心の狭い奴だな」
狭くもなるわよ。
リッコは俯いてぼそっと呟いた。
どうして今日初めて魔法に触れたど素人が成功して、かれこれ十五年は魔法の練習をしているリッコが失敗に終わるのか。考えたくないけれども、これはもしや──
「よっぽど才能がないってこと?」




