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「オー……魔法使い。ここへはどうやって? 飛行機? 魔法?」
「魔法です。普段は大抵どこへ行くにも公共の乗り物なのですが、今回は急に決まったんですよ。なのでチケットが取れなくて」
「どこに住んでんだ?」
「住んでいると言って良いのかどうか。そうですね。言うなれば──」
オードとハヤタが名乗りあったりして話している間、リッコは別のことを考えていた。
魔法でつながらなくなっても、ナナカの家はどこかにはあるのだ。訪ねていきたい。もう一度あの人と笑い合えるようになりたい。
あたしの魔法使い──会いたい。
これ以上考えていたら涙ぐんでしまいそうで、ちょうど中庭に到着したこともあってリッコは思考を切り替えた。ハヤタがどうしたとひそめた声をかけてくるが、何でもないと笑ってごまかした。
オードは外に出てから本調子になったようだった。
彼はまず会社が用意した鉄板の上に杖の頭を向けると、西洋語で何かしら唱えて炎を燃やした。アップテンポの歌のような調子だ。
鉄板の中央に、始めは青白いロウソクの火のような、ぽつりと灯る頼りないエネルギーだったが、やがてそれは板の上を隙間なく舐めていって最後は長方形のオレンジ色の炎に変わった。オレンジの光の向こう側に立つ見物者たちが透けて見える。火の勢いが強い割に煙が出ていないせいだろうか。視界はクリアだ。
「おい魔法使い、燃料はどうしている?」
遠巻きに見物しているジェスタから質問が上がった。
もう歌い終えていたが、彼の注意はまだ炎に向けられていた。リッコはごくりと喉を鳴らしてから答えた。
「えっと……魔力じゃないの?」
「フォローありがとうございます。そう。魔力です」
ぽん。と彼女の肩を叩いてオードが歩み出た。




