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「もう二度としません」と約束するまで戻ってこなかった光の懐かしい温かさを、今でもよく覚えている。
しばらく待っていると、オードが説明しながら杖の石突で、こん。と床を叩く音がした。
床から生まれた小さな光の粒がひとつ、杖の周りを回りながら登るように上へと駆け上がっていく。始めのうちは直径一センチくらいの範囲をようやく照らすばかりの頼りない光だったが、やがて杖の頭にたどり着く頃には会議室の前半分を照らせるくらいの白色光に育っていた。
「さて、実演と言われてお目にかけるのは、光の次には炎がくるのが定番なのですが──」
ここで行なうと火災報知器に引っかかるので、中庭に移動しようと提案された。
会議室に集っていた面々はそれぞれ面白そうに談話しながら移動する。ハヤタはリッコを促して、『魔法使い』に話しかけるため足早に通路を横切った。
「よろしく魔法使い! なあ、魔法使いってどうやってなるんだ?」
「初めまして、よろしく。一般的なのはやはり弟子入りですね──ただし、相手は資格を持っている本物の魔法使いでなければいけません」
「偽もんもいるのか? どっちもこの国にはいないけどな。なあリッコ?」
「──そうね。この国には、ね」
ナナカのところに足しげく通った日のことを思い出して、一瞬うなずくのがためらわれた。でも彼女は確実に外国の人だ。それに、あの彼女の家へ続いていた小さなトンネルは魔法でリッコの家の近くに繋げられていただけのようだ。もう今はなくなってしまった。




