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魔法使いの杖でビジネスをしたいと言う。
目の付け所がおかしい極東の企業から協力を打診された協会の面々は今、賛成派と反対派に分かれて議論の真っ最中だ。
賛成派は仕事がなくて食うや食わずの生活を送る者に多く、その中にわずかながら「魔法使い」そのものを研究対象にしている学者肌の協会員が含まれる。
彼らが言うには、杖を市販にして市場にばら撒けば自ずと魔法使いの数も増えて検体の確保にも困らなくなるとのこと。
仲間を実験材料としか見ていないのかと問いただしたいと言ったのはナナカだ。
オードの考えはまた別で、買うだけ買って協会に加入しない道を選ぶ者が多くなったら検体どころの騒ぎじゃないと思っている。ただ、魔法協会はもう少し一般社会に門戸を開くべきだと感じているため、ここでは賛成の立場を取っている。
ナナカは反対派に回った。杖はおもちゃじゃない。強力な武器になり得る代物を心得もなしに金の力だけで入手できるようにするべきではない。全ての杖は正式な資格を持っている本物の魔法使いに教育を受けた者にのみ与えられるというのが魔法の黎明期から連綿と受け継がれる伝統だと語っていた。
今はまだ議論で済んでいるが、これが内部抗争などに発展したらと思うと冷たい汗が頬を伝う。
オードが沈思黙考していると、司会から声がかかった。
「──では、ここで本物の魔法使いにその術を実演していただきましょう! どうぞ!」




