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そうしてリッコたちが入ったのは大きな会議室。二人がけの筆記板付きの椅子が十脚並んでいるものが四列。合計で八十人が座れる会議室の手前には平らで真白い壁。天井からプロジェクターで映像が映し出されている。星空の背景に白い筆文字でケイオンプロジェクトと書いてある。リッコが最前列に慌てて腰かけると、まだ大丈夫ですよと司会席にいた青年が笑いかけてきた。安心したリッコは礼を言うと壁を指さして満面の笑みを浮かべる。
「あのタイトル、良いご趣味ね〜。好きだわ」
「ありがとうございます! 今朝五秒で作りました」
「突貫工事!?」
司会がサムズアップで答えたのに目を丸くして返した後、二人してからからと笑う。するとまだ空いていた隣にハヤタが座ってきた。誰かくるのかと聞かれたのでそれを否定してどうぞどうぞと歓待した。ハヤタが何か言いかけたが、ミーティングの開始を告げる第一声があがったことでリッコは身体の向きを変えて壁を正面に見据えたので、ハヤタも言葉を飲み込んで司会の次の言葉を待った。
* * *
──リッコ……!? まさか本当にいるとは……
会議室後方で自分の出番がくるのを待っていた金髪の青年は、思わず持っていたカードキーを取り落としそうになった。
ナナカの弟子・オードだ。
今は独り立ちに向けて顧客の獲得に勤しんでいるオードは、今日は魔法の実演を依頼されて魔法使い協会から派遣されてきていた。彼はしげしげとリッコを見つめ、感心しきりに肩をすくめて首を左右に振った。




