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少し早かったのだがリッコは待ちきれずジェスタの元を訪れた。
すっかりテンションが上がってしまっている。なのでジェスタにハイタッチを求めた。
ためらいながらも応えてくれる上司に気をよくして、リッコは親指を立ててみせた後に言った。
「ねえ行かないの?」
「待て待て、もう一人……ユーリンが来る」
「あれ。ユーリンも?」
「ああ。協会選抜のテスター候補に上がったんでな」
「協会選抜?」
「そうだ。魔法協会員に依頼して魔法と親和性のある人材を選定してもらった。お前はいの一番に選ばれていたぞ」
「ねえジェスタそれって──」
「リッコ〜、ジェスタさ〜ん」
ふわふわした雰囲気の同僚は遠くからリッコたちを見つけると手を振りながら小走りに近寄ってきた。普通の大きさの声が聞こえる程度まで来たところで、ジェスタが「まだ慌てなくてもいいぞ」と告げると、最後の数歩をゆっくりと歩くユーリンを迎える形でリッコが前に出た。両手を胸元まで持ち上げて、同じようなポーズを取るユーリンの手と握り合う。
「やあ、よかったあユーリンと一緒で!」
「わたしもよ! リッコと一緒じゃなかったらこの仕事、引き受けてなかったわ」
「ええそれは無いな。あたしはたとえ最後の一人になってもこの仕事続けたい」
「ええそれはすごいわね。わたしは──」
「そら、そろったら行くぞ、キックオフミーティングだ」
「「はあい」」
ふわりと首を傾けて返事をするユーリンの隣で、勢いよく挙手して歩き始めるリッコ。いよいよの出発にわくわくとそわそわが止まらず、にーんまり。と笑ってジェスタの後を追った。




