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 背もたれにリッコの名前が貼ってある椅子は四角いクッション貼りで、長距離列車のシートのようである。彼女はそれに歩み寄ると端末を取って腰かけた。手すりの延長に端末ホルダーがあるが机はない。必要ないのだ。

 椅子がふわりと床から離れ、直線と直角をいくつも描きながら本日の作業場所までリッコを運んでいった。すなわち飛行自動車のそばだ。

 昨日までは前後左右の方向の録画機能をテストしていたが、今日は上下の確認をすることになっている。宙に浮いている自動車の翼部分は上部に結合部があるドア、ガルウィングだ。自動車の車体を囲んでいる二本のリングの中を複数のレンズが行ったり来たりする仕組みが今回のメインのテスト対象。ドローンを色々な角度から自動車に近付けて、カメラにきちんと映り込むかを確認している。


「ぷぅ……集中しっぱなしで疲れる。ちょい休憩……」


 ドローンの操縦は端末に入っている飛行データを送り込めば済むので良いのだが、運転席に乗って実際のカメラ映像を確認するのはテスターが目視でしているのだ。目を皿のようにしていたリッコは閉じた目頭を押さえてじわじわくる疲労感と闘っていた。

 休憩スペースに行くべく、運転席の内側のドアを開けて側に浮かべてあった自分の椅子へと乗り移る。端末を操作して椅子を休憩スペースまで移動させると、後十センチ程度の高さを飛び降りた。

 無料の給茶機からブラックコーヒーを出して、ちびちびと飲みながら考えるのは進展の見られないモーニングルーティンのこと。

 やはり道具──杖が欲しい。それだけで見違えるはずなのだ。一体いくらぐらいするのだろう?

 相場も分からないから、軍資金を多めに作っている最中だ。毎日四時間残業している。現在予算は二百八十万。三百万まで貯まったら、買いに行くんだ──リッコが唯一知っている、魔法使いのところへ。

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