2-15
待ちに待った土曜日。
早起きしたリッコは最寄りの駅から特急と各駅停車を乗り継いで最後はバスに揺られ、残りは歩いて合計六時間。何とか目的の場所へとやってきた。
トンネルは最後にくぐったあの日のまま。ほふく前進でずりずりと通り抜けるが、お尻が少しつっかえた。落ち葉にまみれた厚手のTシャツやデニムパンツを両手で叩いていると、忘れようのない澄んだ声がすぐそばから聞こえてきた。
「あら……もしかして、もしかすると……リッコなの?」
「ナナカ? 良かった、覚えててくれたのね」
「もちろんよ! また会える日が来るなんて、うれしいわ」
ナナカはハーブを摘んでいた両手を広げて、ぎゅう。とリッコに抱きついた。リッコも抱き返して喜びを全身で表す。
「うん、うれしい! あたしも」
「ねえ、時間はあるんでしょう? 今日はスコーンを焼いたのよ」
「「それに、とっておきのお茶を淹れるわ」」
ナナカの決まり文句を二人でハモって笑う。何だか帰ってこれたという実感が湧いてきて、リッコは頬が緩みっぱなしだった。
そんな彼女を家の中に招き入れたナナカは、オードに湯を沸かすように言った後、棚から蜂蜜の瓶と紅茶のポットを持ってきた。ティーカップやスコーンはトレイに乗せられてキッチンからオードが運んできた。いそいそと上機嫌なナナカに、リッコは真剣な面持ちで話しかけた。
「あのね、ナナカ。今日は用があって来たのよ」




