2-14
口座の残高を確認することが日課になってからちょうどひと月が過ぎた。
給与は毎月二十日に振り込まれるが、SNSの広告収入は日によって入らなかったりたくさん入ったりする。そのため毎日確認しても変化があって励みになるのだ。
そしてとうとう、今月の二十日に目標額を超えた。その翌日には半休を取って銀行からおろしてきたのだ。きっちり三百万。
にまり。頬が勝手に緩んでしまう。画面ロックをかけたスマホを枕元に置いてベッドを軋ませる。ベッドの上でごろごろ行ったり来たり。次の土日が待ち遠しい。
「ナナカ……ふふっ。ほんと久しぶり。あたしのこと、すぐに思い出してくれるかしら?」
高校卒業後の春休みに訪れたのが最後で、それ以降は一度も顔を出していない。長の別れになるのに、それらしいあいさつもせずに引っ越してしまったのは心残りでもあった。実は引っ越し先にもあるだろうと思っていたのだ。ナナカの家に続く小さいトンネルが。自然が残っているところは神社仏閣や国立公園などにあるにはあったが、肝心のトンネルはどこを探しても見つからなかった。
これは良い機会だと思ったのだ。杖を買う資金は一朝一夕には貯められない。大学の長い休みはすべてアルバイトに費やして、就職の際には内定をもらった中で一番収入が多い会社を選んだ。それもこれも全部、魔法使いになるためだ。
次の土日は用事があるから、もし休日出勤があっても出られないとジェスタに話を通してある。
ここから元々住んでいた家までの道のりをたどるローカル線がまだ営業中なのもナビアプリで確認済み。
これで万全。
後は土曜になるのを待つばかりだ。




