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ジェスタが持ってきたプチあんぱんを給茶機の緑茶と共に楽しんで、グループが一緒にならなかったアンリや他のテストメンバーと話に花を咲かせる。話題は仕事のことが八割、後の二割が休日に行なう趣味の話。リッコの表向きの趣味は『読書』ということにしてある。魔法が出てくる話なら何でも読むというところまでは誰にでも言える。実際にしていることは、魔法の勉強なのだけど。
「本も悪くないが、俺は映画鑑賞だな。魔法てんこ盛りのファンタジーもよく観るぜ?」
「映画かあ。それも良いよね。あたしも有名どころは観たわよ」
「よしよし、長くなりそうな話は一旦、区切ってもらうぞ」
ジェスタが割って入ってこの先の予定を確認する。彼の持っているリーダー用の端末はメンバー用のテスト実施アプリの他にも、グループ内のメンバーの進捗を確認できる管理アプリも入っている。皆、残りは所要時間一時間ほどなので、テストが終わり次第、帰宅して良いとのこと。
休日出勤は稼ぎ時なので、リッコは最後のテストが終わって片付けが終了するまで残らせてほしいとジェスタに頼んだ。
「何を買うのか知らないが、本当に頑張るなリッコ。あまり根を詰めるなよ」
「ええ。明日は丸一日ゆっくり休むし、大丈夫よ」
「何か買うのか」
「そう。そのために稼いでいるの。でも何を買うかはヒミツよ? ふふ」
「秘密か。ただでさえ気になっていたのに余計に気になるな」
「よしよし、追求は仕事が終わってからにしてくれよ」
結局、残りのテストの間中、ハヤタにあれこれ詮索されたリッコだった。「友だちやめるわよ」と言ってようやく質問攻めは落ち着いたのだが、意外な気もしていた。
てっきり「友だちになったわけじゃないから問題ない、教えろ」と言われるかと思っていたのだ。
自分と違う部門にも友だちができたのはうれしいことなので、それ以上の追求を逃れたのと合わせてより一層喜びを覚えるリッコであった。




