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彼女の職業はテスター。テストパターンに沿って製品が仕様通りに動くか確認する仕事だ。短期間で色々な部署に派遣されて、三次元コードスキャナーやオートクッカー、家載バッテリーに自動判別機能搭載の冷凍冷蔵庫など様々な製品を担当してきて早三年になる。今は飛行自動車に積載される球撮ドライブレコーダーをテストしている。どれも短期の業務なので慣れる頃には終了になってしまい、いまいち成長を感じられるところまでいかないが、変化に身を投じることが好きな本人はそれでも楽しんで仕事に勤しんでいた。
けれども本業を楽しんでいても、それと夢とは別問題である。彼女にはどうしても叶えたい夢が一つだけあった。魔法使いになることだ。それを叶えるためには道具──杖が必要で、それを購入するための軍資金作りに本業に精出しているのだ。
「おはようリッコ。今日のテスト内容ダウンロードした端末、椅子の上に置いておいたわよ」
「おはようユーリン。ありがとう」
身長150センチ前後のリッコとさほど背丈が変わらないユーリンは毎日定時で上がる代わりに毎日一番最初に職場に来てみんなの世話を焼いている。背中の中程までくる金髪巻き毛をヘアクリップで一つにまとめている彼女は明るい青色の瞳を笑ませて応えた。この笑顔で殺伐としがちなテストの現場が和んでいるとリッコは思っている。