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「うぁ……あんた鬼かっ」
「まあまあリッコ。わたしも繁忙期は一緒に残業、頑張るから。ね?」
「え〜ん、ユーリン〜道連れうれしいよぉ。一緒がんばろうね」
「安心しろ、もちろん私も付き合うぞ」
と、上司は眼鏡の奥にある切れ長の目を笑ませて胸を張った。なんだツッコミ待ちか? と思ったリッコは乗りながら手の甲で彼の胸元を軽く叩いた。
「や〜んジェスタ頼もしい! なんちゃって〜」
ジェスタはリッコのちょうど倍の年齢だが、現代社会において敬語の使用は必須ではない。よほど改まった場所に行かない限りは必要ないのだ。二人はからからと笑い合ってから、急に真剣な面持ちになって次の仕事の打ち合わせを始めた。
「後残っているのは染色機と、ダイエッター用のオートクッカーと、ボルト調整機能付きのACケーブル……どれも長期で残業なしなんだよな」
「逆に短くて済む案件とかは? 残業ありの業務が来るまでの繋ぎとかで」
「なるほど短くて……ふむ。ちなみにリッコは靴のサイズはいくつだ」
「靴? 23のスリーEだけど。何で?」
「おめでとう。次の仕事が決まったぞ」
* * *
リッコの次の仕事はフリーカラーという技術を搭載した靴のテストになった。踵にコネクタが付いている透明な靴にカラーシートを取り付けると、取得した色をそのまま靴に反映させるというものだ。まだ何の飾り気もないパンプスがテスト対象だが、マーケットの動き次第では別の形状の靴やサイズ違いも検討される予定である。




