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木曜日は窓を開けて風へと呼びかけた。結果はいつも通り。
残業を四時間するのも、いつも通り。一日八時間の業務なので毎日四時間加算したら、二日で三日分、四日で六日分働いたことになる。そうして大量の気付きと、そこそこの量のNGとを出して、リッコのマグネタイルテストは終わりを告げた。もう少し改良されたら買いたい製品だ。テストが終わって手を離れるのが名残惜しい。しかしその名残り惜しさは大抵の製品に対してつきものだったので、さほど後を引くことはない。
「次は! 次をちょうだい! 暇が一番困るの!」
「落ち着けリッコ。ワーカホリックみたいになっているぞ」
次の仕事をもらいにいった先の上司が目を丸くしている。空き時間を作らせたくないので、担当の仕事が終わるより少し前にその旨連絡するように言われている。が、「少し前」というのがどれくらいなのかリッコには少し難しく、いつも空き時間が発生してしまっている。
「やあねーリッコったら。またお仕事なくなったの? 働きすぎよ」
「そんなことないもん。普通だもん。ねえ、ユーリンの仕事は? 手伝いは必要ない?」
「私のは残業なんかできない業務よ。その代わりに期間が長いんだから。それで良ければ、手伝いはありがたいけど」
「やあダメダメ。残業ありきよ。少なくとも後二ヶ月はね」
「お? いよいよ満額が近付いてきたのか。よく頑張ったな」
拍手を送る上司は楽しそうに釘を刺してきた。
「目標額に到達したらゆっくり休めと言いたいところだが、その頃は残念ながら楽しい楽しい繁忙期だ。変わらず励んでくれよ」




