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テストデータが入っている端末を操作すると、体育館の床の上に赤く光る線が現れた。まずは直進。速度は普段のリッコの歩行ペースと変わらない。荷物のほうは重さ以外は特に指定がないので、以前リュックのテストをする時に使った、荷重が指定できるキューブを再利用している。
「うーん。これ、屋外で使ったらすごい擦り切れるんじゃないかな。報告しないと」
マグネットの力で浮かせている荷物のほうは問題ないが、その下で地面の上を滑らせているほうが、このままでは長くもたないように思われた。端末を操作してテスト結果にはOKを入れるが、備考欄には懸念事項を書き込む。その後、よし。と気を入れ直して、多様な軌跡をたどるテストや、急に走ったりほとんど進まない程度にスローに歩いたりと、様々なテストパターンをこなして、大量の情報を端末に入力していくのだった。
* * *
「リーッコ。新しいお仕事どう?」
「あ、ユーリン。そうね、なんか報告することがたくさんあるわ」
「バグまみれ? NGだらけとか」
「いや、NG自体はそんなないんだけど……なんか、テストに引っかからないところから気になる動作がぽこぽこ出てきてね」
「ふうん。それでまた残業なのね」
「うん。まあそれは狙い通りだからうれしいんだけど。気付いたことは漏らさないように報告あげなきゃいけないから、ちょっと大変」
「がんばれ。でも無理して身体、壊さないようにね?」
「ん。ありがと。気をつけるわ」




