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「次の仕事? あたしは残業がたくさんできるのが良いな」
「もう、リッコったらそんなことばかり言って」
「いいの。お金貯めるんだもん」
「そうしたらリッコが目標金額に達するまでは頑張ってもらうとするか。これから忙しくなる製品と言えば……」
通りすがりの上司も巻き込んで、球撮レコーダーの次に行なう業務の相談をしている。希望がすべて通るわけではないが、意見を聞きにきてくれるだけでもありがたいと彼女は思っていた。働き過ぎだと定時仕事のユーリンは苦い顔をするが、彼女の担当する業務が立て込んでくるとリッコがサポートに回ることもある。なので強くは言えないのだ。
上司が次に割り当ててくれた仕事は、個人用の荷物運搬システム、マグネタイルだった。
マグネタイルは三枚の電磁石から出来ており、一枚を荷物の下に取り付け、もう一枚をその更に下に敷いて荷物を地面から浮かせ、残りの一枚を使って荷物を進めたい方向へ引っ張るというものだ。どんな重たい荷物でも軽く運ぶことができるという触れ込みの製品。
リッコの仕事は、直進での疾走や急な方向転換にも荷物が落ちたりしないことや、振動が少なく、卵を乗せても割れないこと。坂道の上でも荷が重くならないことなどなどをテストすることだ。
まずは体育館のようなシート貼りの建物の中での歩行から始める。新製品は見た目そのものが機密なのですべての窓のカーテンを閉めて扉も閉めてから箱を開封する。品物は正方形の座布団サイズのシートが一枚と、そのシートを二枚分つないだ大きさのものが折りたたまれて入っていた。どれも黒い布が貼ってある。二枚分のシートには短辺の中央に鎖が付けられていて、どうやらこれを持ちながら移動することで荷物が持ち主の後をついてくる仕組みであるようだ。