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「ナナカ……」

「あらあら? もしかして泣いているの? どうしたの? どこか痛い? ベッドで横になったほうがいいかしら」

「違う。違うの……そういうことじゃないもん」

「そうなの。違うの。それじゃひとまず中に入って。あったかいココアでも淹れるわ。言いたくないことなら、言いづらいことなら言わなくてもいいのよ。ちょっと落ち着きましょ」


 リッコのものになるはずだった杖を大枚をはたいた紳士に売っている時のナナカと、今の気遣わしげにリッコの顔を覗き込んでいるナナカとでは、まるで違う人のようで。何となく、どうしてあの杖を他の人に売ってしまったのかを聞きづらくなってしまった。リッコはカップでさえぎったこちら側で温かい吐息を深く吐き出して、誤魔化すように笑った。そして決めたのだ。大人になるまでの間、必ずお金をたくさん貯めておくと。


 嫌な記憶を通り越して現在まで続く誓いにまで意識が向いていくと、リッコはひとつうなずいた。最後は前向きに終わるのが魔法使いの流儀だ。そして明日の支度を整える。明日は水属性の精霊に交信を試みるので澄んだ水の準備をしている。透明な氷を常温で溶かして得られる水が必要だ。大きめのグラスに、買ってきたロックアイスのうち、最も澄んだ氷を入れて、サイドテーブルに置く。それから魔法使いの真似をしてラベンダーの香りを漂わせた寝室で、ベッドに横になった。アラームは夜が明ける三十分前。天気予報のアプリで日の出の時刻を確認してからの設定は数ある日課のうちの一つだ。


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