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ナナカのところに弟子入りしたら、これらの家電は封印しないといけないのだろうか。心配になっているとオードから聞かされたことが頭をよぎった。
「魔法使いはみんな『杖だけあっても魔法は使えない』と言うけど、そんなはずないと、おれは思ってるんだ。わざわざ弟子入りしなくても、手引き書はあるわけだからさ」
「手引き書って?」
「あー、マニュアルのこと」
「でもオードだって、ナナカに弟子入りしたんじゃない?」
「そりゃ、杖をもらうのには弟子入りするのが最短だからさ」
当時、ナナカが硬い木を削って杖を作っていることは知っていた。そのためリッコは、威勢よく挙手して全力でおねだりしたのだった。
「はい! はいはい! あたしにも杖ちょうだいナナカ! あと、手引き書も一緒に!」
「あらあら、リッコったら。杖だけあっても魔法は使えないわよ? それにリッコの国の言葉で書かれた手引き書はないし……」
「いいからいいから。あたし、がんばるし。やるだけやらせて? それでやっぱりだめなら、その時は弟子入りすればいいし」
「そのほうが遠回りだと思うけど……そうね、今作っているものが、リッコが大人になる頃には完成しているだろうから、その頃にやっぱり欲しかったらね。あげましょ」
「やったぁ! 約束よ?」
「はい。や、く、そ、く」
二人は小指を絡ませた手を上下に振ると、小さい笑い声を立てた。
そこまで思い出したら嫌なことまで脳裏に浮かんできてしまって、リッコは野菜スープに八つ当たりした。
思い出はナナカの杖のことだ。