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「──こちらハヤタ。転送魔法の副作用は俺だけやられてたが、無事に回復して、状況オールグリーン。特に妨害も障害もなく敵の屋敷前まで到達。始めてくださいジェスタさん、スズミさん」
ハヤタは左耳にイヤホンのような形状の通話機を入れて連絡役になっている。
本当なら暴れる予定があるハヤタよりも、一歩引いたところで統括を行うナナカのほうが適任なのだが、彼女は現代文明に疎いとのことでハヤタのほうにお鉢が回ってきたのだった。
この通話機は普段は受信ができるが、頭を右側に傾けると音声が送信できる。海や山を越えた超遠距離でもほぼタイムラグなしで通話できるが、バッテリーの持ちが異様に短く商品化に至らなかった製品だ。
コードレスでも使えるが、長時間利用のためにコードをつないで胸ポケットに忍ばせてある携帯型チャージャーから給電している。
『分かった。今後こちらからお前たちに向けて話しかけることはしない。状況は我々のやりとりから察してくれ。うまくやってくれよ』
「はい、任せてください」
ジェスタに応えた後は聞き役に徹しようと黙り込んだハヤタの耳に、会議室に常設されたテレビ電話のコール音が、わずかだが聞こえてきた。
* * *
その広い部屋は円形をしていて、壁はほとんどがガラス張りだった。
一部に人が四~五人乗れるベランダへの出入り口があるが、全体としてはダンスホールを思わせる雰囲気だ。
リッコがソイに案内されて見た時にはなかったが、今は中央に丸テーブルが運び込まれ、その端にテレビ会議システムが組み上げられていた。
大画面のテレビといえば小ぶりな画面を上下左右につなぎ合わせて大きさを確保するのが現在のトレンドだが、ソイのホールに組み立てられたテレビは横五縦四くらいのかなり大きなものだった。
そのそばに生の発声に近くなるようにチューニングされたスピーカーが左右と天井に一つずつ計三つ。
それが発注から設置まで十六時間。
なかなか良い仕事だと、ソイは気に入っていた。
そのテーブルの、テレビが鎮座しているのとは反対側の円弧に七つの椅子を並べさせる。
手伝っているのは、この屋敷にいる中で最も魔法使い歴の長い者──ここでは執事長だ。実は魔法使いとしての経歴はソイよりも長いが、実力はソイのほうが何倍も高い。
素質と努力と教師に恵まれたソイは自らの力で七老人の一角の地位を手に入れた。
ソイに敗北した元七老人だった水属性の執事長はグラスに精霊水を注いで各椅子の前にセットすると、会議の準備を終えて壁際に下がった。
水がグラスから盛り上がり、人の形を取る。
無色透明だったはずの水は今では七老人それぞれの姿に染められて、まるでその場に座っているように鮮明な映像として映し出されている。
『水人形』の魔法だ。
これと『風の便り』を組み合わせて、別の場所に居ても一堂に会しているかのようにやり取りができる。
ソイ以外の六人分の水人形が集まった。




