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「名前なんか出されても分かりません」
「私だって会ったことはないもの」
どうだか。
オードはかたい口調で言った後、ジュースを飲み干すと立ち上がる。
どうしてそこを疑うの?
そばに屈んでいたナナカも彼を追いかけて立ち上がった。
それを眺める目線は、彼女を探る気配が混ざりながらも、どこか刺すような断罪の色を含んでいる。
「既に発動している魔法への干渉なんて、よほど術者に近しい者でなければできないのでは?」
「そうねえ、そういった意味では貴方ならその内できるようになるかもしれないわね、オード」
やましさは感じられない。
それさえ確かめれば充分で、オードは彼のすぐそばに立って微笑んでいるナナカの髪の毛へキスをした。
「すみません。疑いました」
「あら。ヤキモチ妬かれるのも楽しかったのに。
もう終わり?」
「こらそこ! 楽しまない!」
笑いながら人差し指を立てるオード。
その途端、ぼわん。と暴発音がしてナナカの髪の毛がアフロになった。
きゃあきゃあ言いつつジャンケンのチョキを作るナナカ。
自分の髪を元に戻すと同時にオードの髪をちょんまげにした。
「足りない足りない魔力が」
オードがぐいぐいとおかわりしたジュースをあおって恨めしそうな顔を彼女に向ける。




