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「え!?」
なぜ驚く。と目を見開くソイ。
リッコは真ん丸い目をして右手を高速で左右に振った。
どうやら何かを否定したいのだなと察したソイは、うんうんとうなずいて根気強く先を促す。
「キーパーソンなんて大したもんじゃないのよ!
それどころかいつ切られてもおかしくない下っ端テスターなのよ!」
「またまた。魔法の予備知識がある人材など、極東では他を探しても到底見つかるまい。
それだけでも充分に開発の成否の鍵を握る人間と言って良いだろう」
自信を持ちなさい。
そう言われてリッコの心境は大層複雑だった。
いつもなら褒められて嬉しくないわけがないが、今回はそのためにさらわれたらしい。
「そこでだね。もう察しているだろうが君を交渉材料にしてケイオンプロジェクトの開発を辞めさせたい」
「察してなんかない。そんなのムリよ!
あたしが捕まったくらいで開発は止まらないわ」
「自信を持つように言ったろう。
とにかく肝心なのは君を確保したということだ。
後はどういう風に交渉していくか。
それはこちらの仕事だ」
うつむけた頭を左右に振ったら、くらくらした。
「もー。きっとあんたたち後悔すんだから。
そしてあたしのせいにするんだわ。
あたしはムリだって言ったんだからね」