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そこはどうやら書斎のようだった。
窓以外の壁一面に本棚が置かれ、残った窓辺には文机が設置されている。
リッコは濃密な魔法の気配を感じ、自身の肩に手を置いている青年をまずは見上げた。
気配は彼から漂ってきているのだ。
彼は彼女から手を離すとスーツの胸ポケットから綺麗にたたまれた大判のハンカチを取り出してリッコに差し出した。
「ハンカチ?」
「泣いているから」
「ああ」
リッコは気にしないでと返して、自分のポケットから取り出したハンカチで目元を拭う。
「あんた誰? ここどこ?
どうしてあたしを連れ出したの?」
涙声でぐずぐずと鼻を鳴らしながら思い付くままに質問を並べたてるリッコ。
彼は気遣わしげに眉尻を下げるとハンカチを仕舞いつつ彼女に答えた。
「私はソイ。魔法協会の七老人のひとりだ。
これからここ──私の家で過ごす君の世話役になる。
どうしてと問われると弱いな。
ケイオンの反対派、くらいは教えても許されるか」
「……聞かなきゃいけないことが多すぎてどうしたら良いか分かんない……」
ハンカチを握りしめて途方に暮れるリッコ。
それを見たソイが、ぷくっ。と笑った。
「まあひとつずつ片付けよう、リッコちゃん」
「あたしのこと知ってるの?」
「ああ、ナナカのところに入り浸って極東人ながら魔法使いを目指す変わり種。
そこまでなら良かったのだが──」
「何よ」
「もうひとつ。ケイオンプロジェクトのキーパーソンのひとり」




