表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/112

6-2

「──」


 ああ。と、何となく納得した。


 心配するなと言われた意味。


 それは、まるで今この時、ナナカにふんわりと抱かれているような安心感を覚えたからだ。


 目と口を閉じて耳を両手でふさいでいたが、そんなもの要らないのではないかと思えるほど、今リッコは穏やかだった。


 行きと帰りで大違い。


 これが術者の技量の差か──。


 彼女がそっとまぶたを持ち上げる。


 と、白い地にシャンパンピンクのマーブル模様が可愛らしい背景に囲まれて、自分とオードが直立している様子が何の問題もなく見て取れた。


 二人の影だけ映っていない。


「な? 心配要らなかったろ?」


「うん……すごいわねナナカ。でもちょっと長──!?」


 リッコは驚きのあまり硬直した。


 その転送空間の背景に縦に切れ目が入ったのだ。


 そしてそこから潜り込んできた手を彼女は避け損ねた。


 そっと丁重にすくい取られた左手にわずかに力が込められる。


 と、リッコはその切れ目から外に連れ出されてしまった。


 そんなに強い力ではなかったのに──彼女は混乱して絶句した。


「横入り!? 誰だお前!」


 オードの声が追いかけてきた。


 が、ゆがんで隙間が空いている空間はすぐにこちら側から撫でられ、閉じられていく。


 自分が置かれた状況がさっぱり分からないリッコだったが、このままでは極東に戻れなくなってしまうのだけは確かだと思い、必死でオードの名を呼んだ。


 少しだけ残っている空間のゆがみに駆け寄って、なおも彼の名を呼び続ける。


 そうしてゆがみがなくなる頃、リッコの肩に手が置かれた。


 振り向いた彼女を見た、今度は彼が硬直する番だった。


 丸みのある頬を濡らして、彼女は泣いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
超展開キタァァァァ! そういうのもアリなのか! わりと慣性で進んでいた物語に、新たな推進力が! ひどい展開を期待して続きを楽しみにします。
穏やかに帰れたと思った矢先の出来事…突然の横入りに、リッコも驚きを隠せないですよね。 誰が、何をしてきたのか、リッコはこのまま無事か、とても気になる終わり方ですね。続きも楽しみに、これからも読ませて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ