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総勢七人の参加者のうち、彼一人だけ見た目が若い。外見では三十代後半といったところか。中央以西の人間は年より老けて見える傾向があるから、もしかしたらもっと若いのかもしれない。
彼はリッコを狙うのに反対のようで、先ほどから否定的な発言が目立つ。
「無闇に波風を立てるのもよろしくないのでは?」
「ナナカは最近あちら側に転んだろう。魔導書を極東の言葉に翻訳する仕事を受けたり、それを自ら納品に行ったり──」
「だから敵ということですわ。ならばなんの遠慮が要るでしょう」
同じ協会内でも敵味方がある。
テーマが変われば一秒前まで敵同士だったものが味方になったり、またはその逆もある。
それが魔法協会というところだ。
そして、若い者が軽く見られるのもまた協会の特徴だった。
同じ意見を述べたとしても年嵩の者と彼とでは重みが違ってしまう。
それを知っているがゆえに彼はこの場で最年長の長老に意見を求めた。まだ賛成とも反対とも自分の立場を明かしていない者に。
「いかがですか。人質にするのはもう少し──そう、心が痛まない相手がよろしいかと」
「ふふ……そうか、ソイは心が痛むからお嫌なのか……安心しなされ、それなら面倒を見る役目はソイに任じよう」
「いや、そういうことではなく!」
「ならば世話役は他の者でも構いませぬか?」
「っ……分かりました。私が承ります」
一番の若年者と一番の年長者とでは敵わないなとその場にいる全員が思ったのだった。