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振り向くとオードが慣れた様子で夕飯を用意してくれたところだった。
自分が機械に作らせるメニューと、温かい手料理とがこんなに違うということをすっかり忘れていた。
出されたブラウンシチューを美味しさにおかわりして片付けを手伝うと、魔力だけでなく体力も削られていたリッコはナナカの部屋で早々と眠りについた。
* * *
「ちょうどいいとは思われませぬか。飛んで火に入る夏の虫、だと」
「まあ確かに。極東まで出向く手間は省けますなぁ」
風の便りの魔法で会議を持つのは魔法協会の面々だ。
何やら不穏な気配を漂わせている。
「しかし立場上、もう少し上層部に顔が利く者の方が良いのでは?」
「ほほほ。そんなもの、外部に晒すと脅せばよろしいのですわ。どうやらホワイトでいたい企業のようですし」
「ふん……我らは黒でも構わぬわけだからな」
風の便りの魔法は一対一が基本だ。
人数が増えるとその分、魔力の消費量が増える。
特に五人以上が同時に参加すると個々の負担は跳ね上がり、ボリュームコントロールの難易度も倍になる。
それだけでも複雑な魔法だが、この会議には皆、同時に等身大の水鏡も使用していた。
相当な魔力とそれを制御する腕前の持ち主の集いだ。
彼らは自分たちの映っている水鏡を繋ぎ合わせて円柱を作り、その芯になる空間にもう一本の細い柱を立てて映像を映し出している。
そこにはすやすやとよく眠っているリッコの姿。
それを見つめながら一人が声を上げた。
「しかし彼女はナナカの客人でしょう」