1-9
「囲え、踊れ、火の精霊よ──汝の遊び場は我が手のひらの上」
「かこえ、おどれ、火のせいれいよ──なんじの遊び場はわが手のひらの上」
その言葉を二回、繰り返した。すると耳の奥で焚き木が爆ぜる時のような、パキ、という音が鳴り、手のひらがほんのりと温かくなった。ナナカが目を開けるように言う。リッコがゆっくりゆっくりまぶたを開けると、彼女の小さな手のひらの上でロウソクのものを一回り小さくした火が六つ、ロウソクの火を中心にして等間隔で円を描いて並んでいた。
「わぁぁ……すごい。燃えてるキレイ」
「満足した?」
「うん! とっても!」
「じゃあ、精霊をおうちへ帰してあげましょ」
「どうやるの?」
「こうね……」
ナナカはリッコの手を押して、ロウソクの火を輪火の十二時の位置に来るように誘導した。すると六つの火が一つずつ時計回りに消えていく。去り際、一際強く揺らめいてから消える様は本当に何かの踊りのよう。やがて最後の一つが消えて、ロウソクの火だけが残された。
「良かったわね。来ないかもしれないと思ったわ」
ナナカがリッコの手を解放しながら言った。そして残っている火を吹き消して立ち上がると、燭台を元あった場所へ戻して、代わりに手鏡を持ってきた。その鏡をリッコの顔の前にかざす。
「? 何?」
「瞳を見てごらんなさい」
「瞳……え! 何これ、黒目の縁が真っ赤になってる! 充血とは違うみたいだけど!」