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プロローグ
リッコの住む国では、魔法はソリで空を飛ぶサンタクロースと同じようなもので、存在そのものが夢物語だ。子どもの中には信じている者もいるが、大人になれば物語の中だけのものだと割り切るようになる。
ただ、外国では国によっては大人でも信じている者も多い。
特に一部地域では自他共に認める魔法使いが協会を作って魔法の秘匿性を保っている。
彼ら魔法使いのシンボルといえば真っ先に杖が挙げられるだろう。
杖さえあれば魔法は使えるだろうか?
答えは、ノーだ。
魔法は師弟関係によって代々受け継がれてきた秘密の技法であり、杖持ちの魔法使いが一定数超えて存在しないようにその数をコントロールされている。
そのため杖持ちの中には時折、特権を得たかに振る舞う不心得者も出るが、大抵は粛正されて杖を没収の上、追放される。
これは魔法の実在を信じる大人がいないこの国で、ただ一人だけそれを信じている者──リッコが主人公の物語。