推理
前回の“謎“と比べて、大分情報が増えた。まさに、推理小説の要素のみをメモ書きで羅列した本来の“謎“の様式だ。しかし、少女の“謎“は少し違って、当たり前のことを当たり前じゃないように表現することを前回で学んだ。
ふむ…
一読した感じ、最も目につくのは密室だが、密室に関して言えばおそらく大したことは無いだろう。
なぜならここで“メタ推理“をすることが出来るからだ。
密室が出来る条件として大きく3つ。
容疑者が意図的に作ったか。
被害者が意図的に作ったか。
あるいは偶然の連続で出来てしまったか。
このうち容疑者が意図的に作ったものが個人的には評価が高い。しかし、この“謎“はおそらく被害者が意図的に作ったものだ。
なぜなら前回少ない情報の中にも記載されていた「即死」のワードが何処にもないからだ。
つまり、佐藤に刺されてから田中は即死ではない、というメタ推理が発動してしまう。
田中は佐藤に刺された後、どうにか佐藤を部屋から追い出して自分で鍵を閉めた。しかし、田中は警察が来る前に死亡してしまった、と考えれば矛盾はなくなる。
では、足跡の正体は佐藤だろう。
足跡自体にトリックがない、と丁寧に記載されている。
これがなければ重ねて歩いた、とか、人を担いで歩いた、とか様々な選択肢が考えられた。
足跡として書かれていたのは
玄関から出ていくもの。
裏口に入っていくもの。
佐藤が田中を刺した部屋から出ていくもの。
足跡は佐藤が田中を刺した時から警察到着時の間に着いたものであり、足跡は全て同一人物だと書いてあるため、1番最初の足跡は佐藤が田中を刺した部屋から出ていくものであるだろう。
この足跡がどこに向かっているか、だが、裏口に入っていった場合、裏口から出る方法は再び裏口を使うしかない。なぜなら1階には玄関裏口以外に隙間抜け道窓は存在しないからだ。しかし、裏口から出てくる足跡は残っていない。となると、次に残した足跡は玄関から外に出ていく足跡だろう。
玄関から外に出ていく足跡と、裏口に入っていく足跡が同一であれば、矛盾はない。
つまり、佐藤が田中を刺した部屋→玄関→外→裏口と移動していることになる。
しかし、佐藤が田中を刺した部屋が建物Aの外にあった場合、部屋→玄関の移動で「玄関に入っていく足跡」がついてしまう。そのため、佐藤が田中を刺した部屋は建物Aの内部にあることが想像出来る。
だが、建物Aの内部から玄関に移動した所で雪に足跡はつかない。なぜなら屋内を移動しているだけだからだ。では、他に何が考えられるか。
屋上だ。
屋上に佐藤が田中を刺した部屋があれば成り立つ。
屋上の部屋から外に出て、階段を降りて、玄関から外に出て裏口に入る。これが犯人の移動だ。
佐藤が田中を刺した部屋は出入口が1つしかない。下の階に降りるには当然、外に出る必要がある。
これにて“謎“は解決だ。
玄関に入ってくる足跡と、裏口から出てくる足跡がない事で足跡が消えたように見えるが、実際は屋上から玄関に出てきただけで、犯人は警察到着時も裏口に居たままということだろう。
今回も前回同様、警察からしたら何も不思議じゃない出来事をあたかも難事件だ、みたいに見せてきたな。
ただ、1個だけ気になることがあった。
しれっと最初の方に記載されていた「登場人物が3人」という所だった。
2人で成り立ってしまったぞ…?